平成28(行ケ)10065知的財産高等裁判所:審決取消訴訟(4条1項8号:)

日本では、他人の肖像や氏名などを含む商標は、その他人の承諾を得ない限り商標登録を受けることができないこととされています。

この事件では、一連一体かつ無間隔に書した漢字からなる商標につき、4条1項8号にいう「他人の氏名・・・を含む」ものであるか、また同商標が、同号によって登録を受けることができない商標であるが争点となりました。

本件は、原告であるXの氏名「山岸一雄」を要素とする上記商標(商願2013-90519)についての行政事件で、出願人である原告は様々な主張を展開しましたが、以下のように判断され、いずれも退けられました。

商標法4条1項8号の趣旨やその規定ぶりからすると,同号にいう「他人の氏名」が,著名又は周知なものに限られるとは解し難く,また,同号の適用が,他人の氏名を含む商標の登録により,当該他人の人格的利益が侵害され,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったことを要件とするものであるとも解し難い。すなわち,同号は,他人の氏名を含む商標については,そのこと自体によって,上記人格的利益の侵害のおそれを認め,その他人の承諾を得た場合でなければ,商標登録を受けることができないとしているものと解される。

商標法4条1項8号が,その規定上,他人の氏名については「著名な」ものであることを要するとはしていないこと,他人の人格的利益を侵害し,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったことを要件としているとも解し難いことに照らし,文理解釈の範囲を超えるものといわざるを得ない。

この人格的利益の保護の要否を,顧客吸引力の有無(周知性や著名性の有無)により分けるというのも,同号が商品又は役務の出所の混同のおそれを要件としていないことに照らし,相当でない。

諸外国における他人の氏名を含む商標の登録に関する法制と我が国におけるそれとに異なる面があったとしても,それゆえに,当該解釈が,国際協調,国際調和の理念に反するものであるなどということはできない。

この事件は、例え間を開けずに漢字で書した文字列からなる商標であっても、人の氏名と認識される以上は他人の承諾がなければ商標登録を受けることができないと判断されたものとなります。

判決文はこちらからご覧ください。

裁判所|裁判例結果詳細

PAGE TOP