「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「続・既に他人の商標登録があったときの対応方法②もらう(譲り受ける)」です。
前々回の記事で、審査で拒絶された場合の対応策の一つとして「商標をもらう」という手段があることを紹介致しましたが、今回は、これに関してもう少し深掘りしてお伝えしていきたいと思います。
目次
- 商標権をあげる・もらう
- 商標権の譲渡対価は0円でもOKだが・・・
- 商標は、使っているか使っていないかで価値は変わる
- 万能な方法ではないものの、選択肢の一つとしてはアリ
商標権をあげる・もらう
自分が保有する財産については、使おうが、あげようが、貸そうが、捨てようが自由です。
商標は、知的財産の一つですから、財産の一種ですので、スマートフォンや椅子と同じように、誰かにあげることができます。
商標権をあげるというのは、法的には、商標権の譲渡(もっと固く言うと「特定承継」と言います)ということになり、特許庁に届け出ることで、効力が発生します。
特許庁に届け出ないと、商標権が移転したことになりませんので、注意が必要です(スマートフォンや椅子などの動産とも、土地や建物などの不動産とも違うところです)。
商標権の譲渡対価は0円でもOKだが・・・
商標権の譲渡は、その価値がいくらであっても、お互いが合意しさえすれば、いくらで売ろうが契約は成立します。
対価があるときの譲渡のことを「有償譲渡」と呼び、対価がないときの譲渡のことを「無償譲渡」と呼んでいるのですが、日本の実務的には対価が0円でも問題ありません(税法上の問題は別ですが)。
ですが、商標権は、財産権ですので、通常、使われているものであれば財産的価値があります。
とはいえ、商標権といっても、ピンからキリまであり、それがいくらの価値があるのかというのは、価値を評価してみる必要があります。
商標は、使っているか使っていないかで価値は変わる
商標を決定するプロセスには、創作的な要素がないとは言いませんが、辞書にある言葉を商品名にするような場合も少なくなく、概して、商標を決めるといいのは、創作行為ではなく採択行為だと言われています。
このため、商標は、商標それ自体には元来価値はない(または非常に低い)と言っても過言ではありません。
しかし、その商標が、ある特定の商品やサービスとの関係で使用されていくと、商品等の目印としての機能を発揮することになります。
そうすると、商標に顧客を呼び寄せる力(業界では「顧客吸引力」とか「グッドウィル」と呼んでいます。)が備わってきて、ブランド力がついてきます。
ブランド力がついてくると、今度は商品等の価格にも影響をしてきます。
たとえ同じカシミヤのマフラーでも、ノンブランドの商品と世界中で著名なブランドの商品とでは値段が全然違うことになりそうと言うのは、想像に難くないと思います。
これが、まさにブランド力、転じて商標の価値に繋がっていきます。
かくして、ブランド力がついた商標というのは、価値を評価した時の算定額が高くなってくるということになります。
万能な方法ではないものの、選択肢の一つとしてはアリ
前記のように、商標の価値というのは使われ方次第というところがあります。
このため、自分の商標を出願したところ、他人の登録商標が既にあるという理由で拒絶された場合に、その商標をもらってしまおうと思っても、実際にはブランド力がついている商標だったという場合もあり得ます。
そうすると、仮にオーナーが応じてくれたとしても、金額的に購入することが現実的でないという場合もあり得るでしょう。
他方、もしその他人の商標が、登録をしたものの全然使われていない商標だったというようなものであれば、比較的リーズナブルな金額で交渉がまとまることもあるかと思います。
もちろん、商標権をもらうというのは、あげる側の意向に強く左右される事柄ですし、闇雲に商標権者にコンタクトを取れば、寝た子を起こす事態にもなりかねません。
このため、慎重に進め方を考える必要があるという意味で、いつでも使える万能な方法ということはできません。
しかし、うまく事が運んで引用された登録商標のオーナーが応じてくれれば、簡単に拒絶理由を解消することができることになるので、選択肢としては覚えておいて損はないでしょう。
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