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081:【個人向け】改正民法と著作権について相続・遺産分割協議をしたときの注意点について

著作権は、著作物を創作した時に、なんの手続きをすることもなく発生します(著作権法17条)。そして、著作権は、創作した人の死後70年間存続するのが原則です(同50条)。

死後も権利が存続するということは、つまり、著作権は相続されてからの方が長く存続するケースが多いと言えるでしょう。今日は、そんな著作権の相続について触れていきたいと思います。

目次


  • 著作権は相続されるが著作者人格権は相続されない
  • 法定相続分通りの相続かどうかがポイント
  • 法定相続分を超えた分については登録をすべき
  • 法定相続分を下回った側の相続人も登録をするメリットはある

著作権は相続されるが著作者人格権は相続されない


著作権は、小説、詩・楽曲、写真、絵画など、さまざまな創作的な表現(著作物)について発生します。また、著作物の創作と同時に、著作権以外に著作者人格権という権利も発生します(同17条)。

著作権は一種の財産権ですので、著作権者が死亡すると、その著作権は相続の対象となります。相続する人等がいない場合には、消滅します(同62条)。

一方の著作者人格権は、文字通り人格権ですので、譲渡することすらできず(同59条)、相続の対象にもなりません。ただし、死後の人格的利益の保護は継続しますので、著作者が死亡した後だからといって、その人が生きていたとすれば著作者人格権を害したと言えるような行為はできません(同60条)。

法定相続分通りの相続かどうかがポイント


著作権に限らず、人の財産というのは、その人の死亡により相続されます。相続については、民法に法定相続分というものが定められていて、原則として法定相続分に従った相続がなされます。

例外としては、相続に伴って相続分の指定がされたり、遺言があったり、あるいは遺産分割協議をしたりという場合が挙げられます。

こうした場合、法定相続分と異なる相続分が定められることになりますので、一部の相続人が、法定相続分を超えた部分を持つことになります。

2019年に施行された改正民法により、法定相続分を超えた部分の取り扱いが変更となっています。

第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

民法第899条の2第1項

従前は、相続の場合には、遺産分割協議の場合を除いて、登記や登録がなくても自らの持分を他人に主張することができましたが、今回の改正により、自らの持分を他人に主張するためには、登記や登録などの要件を満たす必要があることになりました。

法定相続分を超えた分については登録をすべき


これがどういう場合に問題になるかというと、他の相続人が、遺産分割協議などの取り決めに反した分を他人に売却してしまった場合が典型例となります。

こうした場合、法定相続分を超えた持分を有する相続人と、他の相続人からその人の元々の持分の著作権を譲り受けた他人との間で紛争となります。

上記の民法改正に伴い、著作権法も次のように改正されており、相続の場合であっても、登録をしないと他人に自らの持分を他人に主張することができないと定められました。

第七十七条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 著作権の移転若しくは信託による変更又は処分の制限

著作権法第77条第1号

これを裏から見ると、他の相続人からその人の元々の持分の著作権を譲り受けた他人としては、たとえ遺産分割協議などがあって他の相続人のものになっているように見えたとしても、その持分について登録を受けてしまえば正当な著作権者として、相続の対象となった著作権を共有することができるようになります。

このことから、法定相続分を超えた持分の譲り受けた人は、その著作権についての移転登録をしておく必要があると言えます。

法定相続分を下回った側の相続人も登録をするメリットはある


「こうしたトラブルなんて私・僕の周りでは考えられない」という方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、登録が必要な理由は、実はこれだけではありません。

上記の著作権法第77条第1号にもあるように、著作権の移転は登録しなければ他人に主張することができません。

つまり、自分が著作権を持っていない(あるいは法定相続分より少ない持分しか持っていない)ということも、登録しなければ他人に主張できないということになります。

これがどういう場合に関係してくるかというと、その著作物の財産的価値が高い場合です。財産的価値がある場合には、税金・課税の問題にも関わってきます。

ここで、自らが著作権を持っていない(あるいは法定相続分より少ない持分しか持っていない)ということを他人(例:役所)に主張するには、やはり登録が必要ということになります。

上記の民法第899条の2第1項ではご丁寧に「〜相続分を超える部分については〜」と書かれていますが、民法の特別規定である上記の著作権法第77条第1号にはこうした断りが入っていません。

このことから、著作権の相続は、法定相続分を超えていようと超えていまいと、他人に主張するためには例外なく登録が必要だと解するのが体系的に整合が取れます。

したがって、「法定相続分を下回る場合」でも著作権の移転の登録をしておくことは意味があると言えます。

著作物の財産的価値が高いかどうかは評価する側の問題です。

著作権の持分を多くもらう側も少なくする側も、相続があったら不動産登記と同じように著作権登録をしておくと、覚えておいて頂けたらと思います。


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