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080:【事業者向け】事業所の多機能化・一部転用の際には商標のチェックを欠かさず行いましょう

2021年11月25日付の日本経済新聞に「保育所、多機能化にカジ」と題する記事が掲載されました。
少子高齢化に対応するために、一時利用の拡大のほか、子ども食堂の、子育て相談所といった、周辺サービスの拡大を後押しする流れが見て取れます。

本日は、こうした事業所の多機能化や一部転用を行う際に、なぜ商標のチェックが必要かを解説していきます。

目次


  • 商標権の効力は全国に及ぶ
  • 商標権の権利範囲は予め定めた範囲内で認められる
  • 例えば保育園名、園のシンボルマーク、運営企業名は商標です
  • 商標権を保有していない場合には他社の権利侵害リスクが高くなる
  • 商標権を保有していても権利範囲が狭いと他社の権利侵害をする可能性がある
  • 事業所の多機能化・一部転用を検討する際には、専門家に相談する

商標権の効力は全国に及ぶ


商標権は、特許庁の審査を経て商標登録されることで発生します。

商標権の効力は、日本の領土内全域に及びますので、北海道の事業者が保有している商標権に基づいて、沖縄県の事業者に対して権利行使をすることも可能です。

商標権侵害は、都市部だけの問題ではなく、事業を営んでいるすべての方に関係するものですので、もし商標のことについて何もしていないという方は、直ちに対応すべきと言えます。

商標権の権利範囲は予め定めた範囲内で認められる


日本全国に効力が及ぶ商標権ですが、登録を受けさえすれば誰にでも権利行使をすることができるかというと、必ずしもそうではありません。

商標登録を受ける時には、その商標を何の目印として使うかを願書に記載することになります。

その商品やサービスのことを指定商品・指定役務と呼びます。

商標権の効力は、その指定商品・指定役務の範囲内で認められます。

つまり、「保育」について登録をした商標権は、例え商標が同じであっても、「被服」について使うものには及ばないということになります。

例えば保育園名、園のシンボルマーク、運営企業名は商標です


それではここで、冒頭で触れました保育園に焦点を絞って考えてみたいと思いますが、保育園という事業を営むにあたって、典型的に商標と言えるものが三つあります。

それが、小見出しにも記載した「保育園名」「園のシンボルマーク」「運営企業名」です。もちろん、運営企業が別のシンボルマークを使っていれば、それも商標です。

どれも、保育というサービスの目印として機能している以上は、商標となりますので、他人の商標権を侵害している場合、使用の停止や損害額の賠償を求められることにもなりかねません。

このため、事業を安心・安全に継続するためには、商標権を自ら獲得しておく必要があります。

商標権を保有していない場合には他社の権利侵害リスクが高くなる


一見、商標権を取得していなくとも事業運営に支障がないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、商標権を自らで保有していないということは、知ってか知らずか、他人が同じような商標を登録してしまうことがあります。

商標の世界では、先に使っていただけで救われるというようなルールにはなっていないので、他人が後から使い始めたとしても、先に商標登録を持ってしまえば、その人が優先することになります。

その他人が優先することになる結果、もしその他人から権利行使を受けた場合には、自分が商標を変更したり、金銭を支払う必要が出てきます。

商標権を保有していても権利範囲が狭いと他社の権利侵害をする可能性がある


商標権を保有しているというだけで、うっかり安心しきってしまう方もいらっしゃいますが、前述のように、権利範囲は自ら設定した範囲内ということになります。

ですから、商標権を保有していても、その範囲を超えたところで商標を使ってしまうと、そこには他人の権利があるかもしれません。

権利範囲を超えたところでは、無権利=商標権を持っていない状態ということですので、たとえ商標権を持っていても、その権利範囲を出てしまう時には注意が必要です。

商標権は、確かに、一度取得すれば更新をすることで半永久的に存続させることができますが、自らの権利範囲内で商標を使用することが大切です。

事業所の多機能化・一部転用を検討する際には、専門家に相談する


このように、商標登録というものはもちろん大切なのですが、登録を受けた後も、権利範囲を意識しながら使っていくということが非常に大切になってきます。

冒頭の保育所の多機能化ということも、方向性としては良いとしても、商標権の問題は、各事業者がそれぞれ対応を行う必要があります。

そして、仮に「保育」を権利範囲として商標権を取得していたとしても、独立して提供される「子ども食堂」や「子育て相談」といったサービスは、「保育」の範囲を出てしまっていると考えられます。

トラブルに巻き込まれてしまうと、取引先(保育園であれば、預かっている子どもやその親でしょうか)に迷惑や心配をかけることになります。そうなる前に、専門家に相談の上、トラブル予防として対応を進めておくことが重要です。


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