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011:【事業者・士業向け】フィリピンにおける商標の出願状況について(2021年上半期)

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「フィリピンにおける商標の出願状況について」です。

フィリピンというと、日本からも比較的近く、文化的な交流もあり、身近な印象をお持ちの方も少なくないかと思います。

フィリピンの2021年上半期の商標の出願状況を、フィリピンの商標制度と交えて解説します。

目次


  • 知的財産権の出願件数は全体で20%増。商標は23%増
  • フィリピンへの出願は直接か、それとも国際出願か
  • フィリピンだけに進出するのか、それとも他の国も考えるか
  • フィリピン特有の「使用宣誓」にはご注意を
  • 将来を想定した出願方法を検討しましょう

知的財産権の出願件数は全体で20%増。商標は23%増


フィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines, IPOPHL)の報告によると、フィリピン国内の2021年上半期における知的財産権(特許、実用新案、工業意匠、商標)の出願件数は、前年同時期と比べて全体で20%の伸びが見られたとのことです。

新型コロナウイルスの感染拡大もありながらも出願件数が伸びていることから、経済が回復基調にあると伝えられているようです。

商標の出願件数についても、前年同時期の15,969件から19,649件へと件数が伸びており、23%増加しているとのことです。

フィリピンへの出願は直接か、それとも国際出願か


フィリピンへ商標登録の出願を行うやり方としては、まず、フィリピンの現地代理人を通じて直接、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)に手続きを執るやり方があります。

このほか、日本の特許庁と世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization, WIPO)を通じてフィリピン知的財産庁(IPOPHL)に手続きを執る国際出願の方法もあります。

前記の出願件数は、これらの双方を合算した件数であるかと考えられますが、どちらが使い勝手がいいのでしょうか。

これは、一概に言うことができず、それぞれの企業の現況と今後の見通しに照らして決めていく必要があります。

フィリピンだけに進出するのか、それとも他の国も考えるか


もしフィリピンにだけ進出を考えているのであれば、直接出願が第一候補に上がってきます。

後述の「使用宣誓」のことも考えると、フィリピンの現地代理人と密に連絡を取っておくほうが、結局はスムーズだったりします。

もっとも、もし展開を考えている商品群のバリエーションが豊かで、多くの区分を指定する必要がある場合には、出願のコストが結構な金額になってしまうこともあります。

こうした場合には、国際出願を考えます。国際出願は、マドリッド協定議定書(Madrid Protocol)という国際条約に基づくもので、日本の特許庁に英語で作成した願書を提出し、世界知的所有権機関(WIPO)を経由して行う出願方法をいいます。

この国際出願の場合、出願段階でフィリピンの現地代理人を通さないで手続きをすることができるため、比較的コストを抑えることができることになります(日本の特許庁、WIPO、出願先の国の特許庁のそれぞれの手数料(印紙代)がかかるので、一概に安いとはいえないことに注意)。

また、商品のバリエーションはそれほど多くないけれども、展開したい国が複数あるのだ、というときにも国際出願は便利です。

前述のように、国数が増えればその分コストメリットがありますし、なんといっても国際出願は、その後の管理が一元化できるというのがとても便利です。

詳細は別記事で書きたいと思いますが、住所が変わった場合や、権利を譲渡したいというような場合など、出願後の管理業務をまとめることができるので、後々のことを考えると、国際出願に軍配が上がることがしばしばあります。

フィリピン特有の「使用宣誓」にはご注意を


以上のように、フィリピンへの出願方法としては、直接出願という方法と、国際出願という方法の2つがあることをお伝えしました。

このどちらについても当てはまるのが、出願・登録した商標をフィリピンで指定した商品やサービスとの関係で確かに使っているということを、宣誓書として提出する必要があるということです。

タイミングとしては、フィリピンに出願をしてから3年が経つまでと、フィリピンで登録になってから5〜6年のタイミングで、その後も定期的に提出が求められます。

もし使用していないという場合や、使用宣誓書を提出しそびれてしまうと、せっかくの商標登録が抹消されてしまいます。

もしフィリピンに進出をお考えの場合には、商標をいつから、どこで、どのように使っているのかの記録をとっておくことが必要です。

将来を想定した出願方法を検討しましょう


フィリピンでは、出願をしてから審査結果が出るまでに半年程度は時間がかかります。

国際出願をすると、これにプラスして半年程度の時間がかかることを想定しておく必要があります。

世界各国、商標登録の出願があると、審査に数ヶ月から1年ないし2年ほどの時間を要することもあります(早い国は数日というところもある一方、もっとかかる国もあります)。

このため、海外展開が視野に入った段階で商標について対応をしておかないと、いざ進出しようというときになって商標権が取れていないという状況になりかねません。

ただ取れていないだけであればまだしも、誰かに取られてしまっていたということになると、目も当てられません。

他人に取られてしまわないように先に商標登録を取っておくというための補助金・助成金もありますので、ご興味のある方は当事務所までご相談ください。


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