わかって納得の知財ブログ

039:【事業者・士業向け】続・既に他人の商標登録があったときの対応方法④協力してもらう(アサインバック)

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「続・既に他人の商標登録があったときの対応方法④協力してもらう(アサインバック)」です。

特許庁の審査で、自分の商標が他人の登録商標と似ているという理由で拒絶されてしまった場合の対応方法については、これまで解説をしてきました。

しかし、どうにも自力では特許庁の判断を覆せないという場合に、どのような手段があるのでしょうか。

これはかなり実務的なお話になりますが、実務的には比較的ポピュラーな方法なので、ご紹介したいと思います。

目次


  • 同意書は今の日本の実務では認められない
  • アサインバックとは
  • 一見便利そうだけれども注意も必要

同意書は今の日本の実務では認められない


自力ではどうにも特許庁の判断を覆せそうもないという場合でも、実際にはビジネス的にはまるで違っているなどの理由で、お互い棲み分けができるというような場合はあるかと思います。

こういう場合、商標権者の協力を得ようと思ったときにまず思いつくのが、商標権者から一筆もらったらどうなのか、というところかと思います。

つまり、商標権者から同意書をもらうというやり方です。

実はこの同意書というのは、英語ではLetter of consent(LOC)などと呼ばれ、世界的には認めている国も少なくありませんが、残念ながら今の日本では認められていません。

「今の」と書いていますが、昔から認められていません。個人的には、認められるようになるといいなと思っています。

このため、審査で引用された登録商標の名義人である商標権者から一筆をもらったとしても、それを出したところで特許庁の判断はひっくり返りません。

アサインバックとは


同意書に一筆もらってもダメならばどうしようもないのかというと、実はそうとも限りません。

審査で引用された登録商標の名義を、一時的に出願人の名義にするという方法があり、一般的にアサインバックと呼ばれています。

商標権を出願人に一時的に譲渡することで、出願している商標と登録商標の名義人が一致することになり、拒絶理由は解消することになります。

この手法は、日本のみならず、同意書が認められていない国を中心に広く知られています。

かくして拒絶理由が解消すると、特許庁から登録査定が発せられますので、登録料を納付して、ようやく自分の商標は登録に至ります。

そして、一時的に借り受けた他人の登録商標については、元の名義人に再び譲渡することで、一件落着です。

一見便利そうだけれども注意も必要


以上のように、アサインバックという手法は、とても魅力的に映るかと思います。

しかし、一時的にも財産を移転することに難色を示される場合もありますし、人によっては足元を見られる場合もあり得るでしょう。

何より、その交渉が失敗したときのことを想定しておく必要があります。失敗というのは、そもそも門前払いという場合もあれば、対価交渉で決裂する場合も想定されます。

そして、交渉を持ちかけた段階で、どこの誰が、特許庁の判断としては類似している商標を使おうとしている(使っている)かは、商標権者に分かってしまいます。

つまり、ことが上手く運べば良いものの、交渉次第では寝た子を起こすことにもなりかねません。

このため、アサインバックの交渉を持ちかけるときには、交渉が失敗したときには直ちにブランドを変えるくらいの心持ちで取り掛かる必要があります。

このように、アサインバックもいいことばかりではなく、何でもかんでもアサインバックで解決しようというのは、あまり推奨できるものではありません。

ですので、当事務所としても、この手法を諸手を挙げておすすめするというものではなく、やはり、商標を採択する段階で、出願をする前に調査を行い、できる限り拒絶されるリスクが低いものを選ぶというのが、とても大事になってくるということは、しつこくてもお伝えしていきたいと考えています。


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