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026:【事業者向け】国際出願で後から出願する国や地域を追加することができる「事後指定」とは

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「国際出願で後から出願する国や地域を追加することができる「事後指定」とは」です。

マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)に基づく国際出願(マドプロ出願)では、国際出願の後であっても、出願したい国・地域を追加することができます。

この制度を、「事後指定(じごしてい)」と言い、英語では「Subsequent designation」と呼んでいます。

管理の一元化が叶うため、とても便利な制度ですが、一方で注意点もありますので、以下、一緒に見ていきたいと思います。

目次


  • 事後指定ができるのは国際登録になってから
  • 国際登録の一部の範囲に限定して事後指定をすることができる
  • 存続期間は事後指定の日から10年ではないことに注意

事後指定ができるのは国際登録になってから


国際出願(マドプロ出願)をするときには、どの国・地域での保護を求めるかについて記載をした願書を提出します。

その後、もし保護を求める国が増えたという場合には、新たに国際出願(マドプロ出願)を行うこともできますが、既存の国際登録に基づいて事後指定を行うこともできます。

ここで注意が必要なのが、国際出願(マドプロ出願)をしていればいつでも事後指定ができるのかというと、そうではありません。

事後指定は、国際出願が特許庁または世界知的所有権機関(WIPO)における審査が続いている最中は行うことができず、無事に審査を通過して「国際登録」になってから行う必要があります。

国際登録をされると、国際登録番号が付与されて、国際登録証が送られてきますので、事後指定を行うのはそれからということになります。

このため、もし国際出願の願書を提出した直後に国や地域を追加したいとなった場合には、少なくとも国際登録番号が付与されるのを待つ必要があるので、国際出願の際には、保護を求める国や地域に抜け漏れがないか確認を行うことが大切です。

国際登録の一部の範囲に限定して事後指定をすることができる


国際登録では幅広く商品やサービスを指定しているものの、ある特定の国ではその一部の商品・サービスしか展開しないという場合もあるかと思います(例えば、国際登録では洋服・かばん・メガネをカバーしているが、一部の国へは洋服しか出荷しないというような場合)。

こうした場合、費用節減の観点では、必要な範囲に限定して出願をすることが望ましいといえます。

こうしたニーズについては、やはり想定されており、既に存在している国際登録に基づいて事後指定をするときには、その国際登録の範囲内で、柔軟に範囲を絞って出願をすることができる仕組みになっています。

このため、上記の例のような場合でも、適切に対応をすることが可能になります。

もっとも、将来的にその国でのビジネスを拡大しようという想定があるのであれば、商標は早い者勝ちの先願主義を採用する国が多いですから、最初から広めに出願をしておく方が良い場合もあります。

この点は、ケースバイケースで判断が必要になります。

存続期間は事後指定の日から10年ではないことに注意


以上お伝えしてきましたように、事後指定は非常に使い勝手の良い制度になっています。

しかし、注意をしなければならないのは、存続期間の問題です。

国際登録の存続期間は、国際登録の日から10年間となっていますので、例えば2021年10月1日に国際登録されたものは、2031年10月1日まで存続します。そして、希望すればさらに10年間の更新ができるようになっています。

このため、例えば当初は中国と韓国を指定する国際登録があり、これに基づいて追加でEUを事後指定する場合を仮定しますと、中国と韓国は丸々10年の期間が与えられますが、EUは事後指定をした時点までの分は保護期間が削られることになります。

これがどういうことか、上記の例に従い2021年10月1日に国際登録されたと仮定して考えてみます。

この前提で、国際登録の日の1年後の2022年10月1日にEUを事後指定をしても、あるいは9年後の2030年10月1日にEUを事後指定をしても、結局、中国・韓国・EUについての更新手続を2031年10月1日までに行う必要があります。

前者であれば、9年分の期間が与えられますが、後者であると1年分ということになります。事後指定のタイミングが変わるによって料金の減額はありませんので、後者だと、なんとなく損をした気分になります。

もちろん、管理の一元化という意味で、メリットは依然としてありますが、もし事後指定をする国や地域が多いような場合には、別途国際出願(マドプロ出願)を改めて行うというのもやり方の一つと言えます。

国際的に商標の保護を受けようとする場合、中長期的な目線で戦略を練って進めることが非常に大切になります。ご不明なことがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。


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