「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「商標の国際出願(マドプロ出願)のメリット」です。
一昨日・昨日と、マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)に基づく国際出願(通称「マドプロ出願」)にまつわる誤解についてお伝えして参りましたが、誤解ばかりではなく、どのようなメリットがあるかをお伝えしていきたいと思います。
過去記事はこちらからどうぞ。
- 2021年9月29日の記事|国際商標は万能か?国際出願にまつわるよくある誤解4選
- 2021年9月30日の記事|【解説編】国際商標は万能か?国際出願にまつわるよくある誤解4選
目次
- メリット1:1件の国際出願(マドプロ出願)で複数の国・地域に出願をすることができる
- メリット2:現地代理人を介さずに商標登録出願ができるから出願費用を抑えることができる
- メリット3:国際登録後の管理が簡素化できる
- メリット4:後から出願する国や地域を追加することができる
- まとめ
メリット1:1件の国際出願(マドプロ出願)で複数の国・地域に出願をすることができる
ある国や地域で商標の保護を求める場合に、伝統的な方法としては、その国や地域ごとに直接商標登録出願を行い、それぞれで登録を受ける必要があります。
しかし、直接出願の場合、例えば10ヶ国での商標登録を希望する場合には少なくとも10件の商標登録出願を行う必要があります。
そうすると、管理の手間も少なくとも10件分ということになり煩雑になります。
一方、国際出願(マドプロ出願)という手段を採れば、1件の国際出願によって、一括して複数の国に出願をすることができるようになりますので、管理は1件ということになります。。
国際出願は、世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局というところに、日本の特許庁を経由して手続きを行います。
そして、国際出願がされたものは、WIPOでの審査を経て国際登録がされ、以後の経緯などの各種の情報が全て国際登録簿に一元的に記録されることになるため、こうした簡素化が実現できています。
例えば、中国・韓国・シンガポール・タイ・ベトナム・インドネシア・EU・米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドといった国に出願をしたいという場合でも、1件の国際出願にまとめることができるというのは、想像しただけでも良さそうではないでしょうか。
メリット2:現地代理人を介さずに商標登録出願ができるから出願費用を抑えることができる
外国で商標登録を受けようとする場合、国や地域ごとに直接出願を行おうとすると、それぞれの国や地域の弁理士や弁護士を選任する必要があります(外国の弁理士や弁護士のことをひとくくりに「現地代理人」と呼んでいます)。
現地代理人を選任するということは、現地代理人の料金が発生してしまいます。
しかし、国際出願をする場合には、現地代理人を介さずにそれぞれの国や地域に出願をすることができますので、費用を抑えることができるようになります。
ただし、代わりに世界知的所有権機関(WIPO)に支払う費用があるので、国や地域が少ないと却って割高になる場合がありますので、注意が必要です。
メリット3:国際登録後の管理が簡素化できる
名義人の名称や住所が変わった時や、商標権の譲渡をした場合などにも、国際出願(マドプロ出願)のメリットがあります。
例えば10ヶ国で商標登録を保有していて、名義人の名称や住所の変更があったりや商標権の譲渡があったりする場合、それを記録する手続を進めることになります。
各国の商標登録が直接出願をしたものである場合には、出願と同様、現地代理人を通じて行う必要があります。
しかし国際出願(マドプロ出願)であれば、上記の通り、各種の情報は国際登録簿で一元的に管理されます。
つまり、国際登録簿の情報を書き換えれば、それに紐づいた各国・地域への名義人の情報も自動的に書き換わる仕組みになっています。
このため、名義人の名称や住所が変わった時や、商標権の譲渡をした場合などを想定しても、国際出願(マドプロ出願)とすることによって、将来発生するかもしれない手続きも簡素にでき、かつ費用も抑えることができるようになります。
メリット4:後から出願する国や地域を追加することができる
これは、マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)の特徴的な制度で、とても便利なものです。
ただ、注意点もあるので、記事を改めたいと思います。
国際出願(マドプロ出願)についてご興味のある方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
まとめ
以上のように、国際出願はとても多くのメリットがある制度になりますので、海外進出を考えている方は、積極的に活用することで、効率的に各国で商標登録を確保できるようになります。
ただし、ケースによっては国際出願でない方が良いという場合もありますので、個別に方針は検討すべきと言えます。
弊所では国際出願に完全対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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