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027:【事業者向け】商標の国際出願(マドプロ出願)で気をつけるべきこと

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「商標の国際出願(マドプロ出願)で気をつけるべきこと」です。

前回までの記事で、国際出願(マドプロ出願)がとても便利な制度であることをお伝えしてきました。

しかし、何事もいいことばかりではなく、国際出願(マドプロ出願)においても、注意すべき点がいくつかあります。

目次


  • 国際出願をするためには基礎となる日本での出願・登録が必要
  • 日本企業が国際出願で日本を指定すること(自己指定)はできない
  • 国際出願ができるのは基礎となる日本での出願・登録の指定商品・指定役務の範囲内
  • 国際出願ができるのは基礎となる日本での出願・登録と同一の商標
  • 基礎となる日本での出願・登録が消滅すると国際登録まで消滅することがある

国際出願をするためには基礎となる日本での出願・登録が必要


前回までの記事で、国際出願が便利な制度ということが分かりましたが、いきなり国際出願をすることはできません。

国際出願は、出願人の本国(日本企業であれば日本)の特許庁に、国際出願の基礎となる商標登録出願を行う必要があります。

もし既に商標登録を保有している場合には、それを基礎にすることもできます。

日本企業が国際出願で日本を指定すること(自己指定)はできない


国際出願は、本国での商標登録出願または商標登録に基づいて国際出願を行いますが、その国際出願で日本を指定するはできません。

特許や意匠の国際出願では認められている、いわゆる「自己指定」は、商標の場合には認められていないので、混同しないように注意が必要です。

国際出願ができるのは基礎となる日本での出願・登録の指定商品・指定役務の範囲内


国際出願は、基礎となる日本の出願で指定している商品やサービスの範囲内でのみ行うことができます。

例えば、日本の商標登録が第25類「被服」だけを指定するものである場合には、「被服」の範囲内でのみ国際出願をすることができます。しかし、指定していない「履物」を含めることはできません。

もし国際出願では「被服」だけでなく「履物」も含めたいという場合には、「履物」を指定する基礎出願または基礎登録が別途必要になります。

複数の基礎出願・基礎登録に基づいて国際出願をすることは認められていますので、国際出願をする時には、日本でどのような商標登録出願をしているか、どのような商標登録を保有しているかを確認することが大切です。

国際出願ができるのは基礎となる日本での出願・登録と同一の商標


国際出願は、基礎となる日本の出願をした商標または登録を受けた商標と同一の商標についてする必要があります。

このため、例えば日本の商標登録が赤色にカラーリングされていたとして、それに基づいて白黒の商標についての国際出願をすることはできません。

上記で、複数の基礎出願・基礎登録に基づいて国際出願をすることができるとお伝えしましたが、商標の態様が異なっていると、商標が不一致であるということで、国際出願をすることができませんので注意が必要です。

また、時々、日本で出願・登録している商標が日本語と英語の2段書きになっているものがあります。

こうした場合でも、国際出願をする時にそのどちらかを分離することはできず、同一の商標とする必要があるので、本当に2段書きのもので国際出願をするのか、検討する必要があります。

基礎となる日本での出願・登録が消滅すると国際登録まで消滅することがある


国際出願の基礎とする商標登録出願が、国際出願をした後に、日本の審査で拒絶されてしまったり、あるいは基礎とする商標登録が審判で取り消されたり無効になったりして消滅してしまったりして、国際登録の基礎が無くなってしまうことがあります。

もしこうした事態が国際登録の日から5年以内に起きてしまうと、国際登録もこれに引きづられて消滅してしまうので、注意が必要です(業界では「セントラルアタック」と呼んでいます)。

このほかにも、細かいことを言い出すとキリがないのですが、以上が国際出願(マドプロ出願)の主だった注意点となります。


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