「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「商標の審査におけるブラックボックス期間とサブマリン商標ン商標」です。
商標調査を行う場合に、自分で調査を行うにしても、弁理士に依頼するにしても、ある時点でしたその調査は完全なのか?という問題は残ってしまいます。
どうしても調査が完全とはならない部分があるというのは、知っておいて損はないでしょう。商標調査を行うことのメリットは前回の記事をご覧ください。
目次
- ブラックボックス期間とその解消方法
- サブマリン商標とは
- それでも調査はした方がいい
ブラックボックス期間とその解消方法
まずはブラックボックス期間についてです。たった今誰かが出願をした商標というのは、リアルタイムではデータベースには反映されていないということは、ご想像に難くないと思います。
特許庁に出願をすると、特許庁において受付がされ、公報の発行に向けた処理がされ、その後にデータベースに掲載されます。
このため、出願をしてからデータベースに掲載されるまでには、概ね数週間〜1ヶ月程度の時間が空くことになります。
この空いた期間を、ブラックボックス期間と呼んでいます。
残念ながら、出願前の調査の段階でこの問題を回避するというのは、構造的に難しいと言えます。
しかし、出願をした後に再度商標調査をすることで、審査結果が返ってくる前に、ブラックボックス期間に他人の商標が入り込んでいないかを確認することができます。
サブマリン商標とは
次に、サブマリン商標についてです。これは、潜水艦が突然目の前に浮上してくるということのたとえで、ブラックボックス期間とは別のものです。
日本をはじめとする多くの国が加盟している「パリ条約」というもののおかげで、日本でした出願と同じ商標について外国に出願をするときに、6ヶ月間は優先的に扱ってもらえます。
この優先的に扱ってもらえる利益を「優先権」と呼びますが、これは外国の企業が自分の国でした出願について日本に出願をするという場合にも適用されるものとなっています。
つまり、例えば2021年1月1日に外国(例えば米国)で出願された商標が、2021年7月1日に優先権を伴って日本で出願されると、2021年1月1日を基準に日本での審査を受けることができることになります。
そうすると、2021年4月頃の時点では日本のデータベースには出てこないものの、後になって入り込んでくるということがあり得るというものです。
こればかりは予想ができるものではないので、万が一遭遇してしまったら、泣く泣く諦めざるを得ないものと言えます(交渉という余地はあるかもしれませんので、直ちに断念というものでもありませんが)。
これは、パリ条約の加盟国(2020年10月1日現在で177ヶ国|WIPOウェブサイト)のどこかでされた出願が、優先権を伴って日本に入ってくるかどうかという問題なので、例えば毎月のように世界中の商標データベースを調べても、この問題を回避することはなかなか難しいと言えます。
それでも調査はした方がいい
このように書くと、では調査なんていらないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ブラックボックス期間にしろサブマリン商標にしろ、検索できない対象というのは、せいぜい直近の数ヶ月〜半年程度の範囲のものとなります。
しかし、日本の商標制度は、100年以上前から続いており、2021年10月9日現在で現存する最も古く登録された商標は1902年となっています。
前回の記事でお伝えのように、調査をしないで出願をしてしまうと、後々困ったことになる可能性は十分にある一方、調査を行うことで、大昔から現在までの商標登録・出願との関係で、自分の商標が登録できそうかどうかを検討することができます。
このため、たとえブラックボックス期間やサブマリン商標という可能性があるとしても、調査をしておく方が良いということになります。
もちろん、商標調査というのは出願のために必須のことではないので、事業化までに時間的な余裕が十分にあったり、費用をできる限りかけたくなかったり、あるいはあえて観測気球的な出願をする場合など、調査をしないで出願をすることもありはします。
しかし、以上に述べたように、基本的には出願前に調査をしておくというのがベターと言えるでしょう。
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