「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「地域ブランド(地域団体商標)と地理的表示(GI)の違い」です。
どちらも、そのネーミングからは、地元密着的な何かというようなイメージは掴んでいただけるかと思いますが、その違いを分かっているか?と言われると、なかなか難しいのではないでしょうか。
どちらも近年注目を集めている制度ですので、基本的なところを押さえておきましょう。
目次
- 地域団体商標
- 地理的表示(酒類以外)
- 参考:地理的表示(酒類)
- まとめ
地域団体商標
地域団体商標というのは、商標法に定められた制度で、「地域名」と「商品(サービス)名」からなる地域ブランドを保護することによって、地域経済の活性化することを目的とした制度です。
所管する官庁は特許庁で、全ての商品又はサービスが対象になっています。2006年4月から制度が始まりました。主な登録要件は、以下の通りです。
①事業協同組合・農業協同組合等の特定の組合,商工会,商工会議所,特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国法人が請求していること
②団体の構成員に使用させる商標であること
③地域名+商品等の普通名称又は慣用名称であること
④商標全体として商品等の普通名称でないこと
⑤地名と商品との密接な関連性があること
⑥一定程度の周知性(隣接都道府県程度)があること
地域団体商標は、商標登録制度の中に設けられた制度ですので、登録の維持のためには、10年ごとに更新をし続ける必要があります。
侵害行為に対しては、民事的には差止請求、損害賠償請求、信用回復措置請求をすることができ、このほかに刑事罰(懲役又は罰金)が課される可能性もあります。
地域団体商標は、2021年10月現在で714件の登録がなされています。
お近くで登録されているものがあるか、ご興味のある方は以下のリンク先をご覧ください。
特許庁|地域団体商標検索ページ
地理的表示(酒類以外)
地理的表示は、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)で定められた制度で、地域の伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地などの特性が、品質などの特性に結びついている産品の名称を、地理的表示という知的財産として登録をして保護するためのものです。
所管する官庁は農林水産省で、農林水産物や飲食料品等(酒類を除く。)が対象になっています(酒類は国税庁が所管しています)。2015年6月から制度が始まりました。英語ではGeographical Indicationと言い、略して「GI」とも称されます。主な登録要件は、以下の通りです。
①生産・加工業者の団体(法人格を有しない地域のブランド協議会等も請求主体になり得る。)が請求していること
②特定の品質等の特性があること
③その特性と原産地が結び付いていること
④その原産地と特性を示すことが出来る表示であること
地理的表示として登録を受けると、基準を満たし続けさえすれば登録され続けることになります。
侵害があった場合には、行政による取締りがなされます。
地理的表示は、2021年10月現在で111件の登録がなされています。
お近くで登録されているものがあるか、ご興味のある方は以下のリンク先をご覧ください。
農林水産省|登録産品一覧
参考:地理的表示(酒類)
酒類の地理的表示制度とは、地域の共有財産である「産地名」の適切な使用を促進する制度です。酒類については、国税庁が所管しており、酒類については、前述の地理的表示法の制定に先立って1998年から制度が始まっています。
国税庁|酒類の地理的表示一覧
まとめ
以上見てきましたように、地域団体商標は、商標制度の枠組みの中での保護制度です。
一方の地理的表示は、商標とは異なる枠組みでの保護制度となります。
商品やサービスの名称を保護するための手段は、一般的な「商標登録」ばかりではありません。
状況に応じて適切なリソースを活用していくことが、安心・安全なビジネス展開には大切です。
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