「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「自分が商標と思ったものが商標なのか?商標とは何かについて」です。
商標についてあまり馴染みのない方だと、一体何の話?という印象を持たれるかもしれませんが、そもそも商標ってなんなの?というところに絞って解説していきます。
目次
- 商標が何なのかを身近な例で考えてみましょう
- 商標かどうかと登録を受けることができるかは別
- 商標法上の定義に該当すれば、誰がどう思おうとそれは商標です
商標が何なのかを身近な例で考えてみましょう
商標は、一言でいえば、「取引上の目印」です。
普段、何か商品を買おうとするときや、何かのサービスを受けようとするときに、一体何をみて購入・利用を決めているでしょうか。
誰かからどこそこのレストランがおいしいよと聞かされ、行ってみようとする場合、たいていはお店の名前を聞くことと思います。
また、一度行ったお店が気に入って、また行きたいと思った時にも、やはりお店の名前を覚えると思います。
これは、お店の名前が取引上の目印になっているということですね。
ですから、レストランのお店の名前は、商標だと言えます。
以上は、レストランというサービスのお話ですが、商品でも基本的には同じ考えです。
いつも同じメーカーのスマートフォンを使っている方が周りにいるかと思いますが、その方は、そのメーカーの、その商品が気に入っているから、毎回同じもの(の新しい機種)を購入しているのですね。
通常、スマートフォンであればそのメーカーの名前や、その商品名は、本体なりに表示されていますから、それを手がかりに購入することができています。
ですから、そのメーカーの名前や、その商品名は、商標だと言えます。
このように、商品やサービスに関して用いられる名前は、典型的な商標だと言えます。
ですが、商標とは何もこれだけではありません。よく、会社の名前の横などにシンボルマークが置かれていることがあると思います。
身近なところでは、コーヒーショップのシンボルマークと言って、思いつくものがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
商標かどうかと登録を受けることができるかは別
商標法には、商標とは何かが書かれています。第2条を早速見てみましょう。
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
商標法第2条第1項
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)(以下略)
法律なので、ちょっと小難しく書かれていますので、噛み砕いてみます。
理解を優先して、エッセンスを抽出すると、「商標とは、標章であって、商品や役務(サービス)について使用するもの」と言えます。
そして、「標章とは、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」ということになります。
なお、「標章」は「ひょうしょう」と読みます。「商標(しょうひょう)」と紛らわしいですが、別の言葉として定められています。
標章のひとつひとつがどういったものなのかについて考える前に、忘れないで頂きたいのが、商標かどうかと登録されているかどうかは関係ないということです。
上記の商標の定義のどこにも、登録されているとか、出願されているとか、そういうことは書かれていません。
商標法上の定義に該当すれば、誰がどう思おうとそれは商標です
登録されているものや出願しているものだけが、さらには自分が商標だと思っているものだけが商標だと思われている方とお会いすることがありますが、これは間違いです。
元来、商標かどうかというのは、ある人が商品やサービスとの関係で使用するマークであるかどうかだけで判断がされます。
つまり、登録とか出願という行政上の手続きの有無や結論に関わりなく、商品やサービスとの関係で使用されているマークが、商標法上の商標の定義に該当しさえすれば、それは使用している本人がどう思おうと、商標になります。
そして、そのマークについて、商標法という法律に基づいて登録が認められるか(特定の人に独占させて良いか)は、別の問題として検討が必要になりますが、これについては記事を改めたいと思います。
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