わかって納得の知財ブログ

085:【事業者・企業向け】企業の成長ステージ別に考えるブランド保護の考え方について

2020年「全国新設法人動向」調査によれば、2020年の新設法人の数は13万件超であったとのことです。このうち、何割かの事業者・企業は事業を拡大して存続し、さらにそのうちのいくつかは上場を果たすかもしれません。

商標については、早い者勝ちの制度になっていて、最初に特許庁に出願した人が優先するということは、これまでに何度か記事にしてきましたが、全ての事業者・企業がタイムリーに万全な対応ができているかといえば、必ずしもそうではないと思われます。

今日は、企業の成長ステージごとに、どのような考え方でブランド保護に取り組めばいいのかを考えてみたいと思います。

目次


  • 創業段階で最低限の権利化はすべき
  • 成長段階では競合他社の参入を防ぐべき
  • 上場を考えた時には網羅的に権利化をすべき

創業段階で最低限の権利化はすべき


事業を興した時は、つい目先のやることに集中してしまい、自社ブランドの保護が後手に回ることが少なくありません。

しかし、これまでにもお伝えしてきたように、いざ事業が軌道に乗り始めてきた時に、自社ブランドが他人の商標権を侵害していたということが判明することも少なくありません。

誰かに文句を言われる前に自分で気がついて判明するならまだしも、警告書や訴状が届いたことをきっかけに商標権侵害状態だったということが判明したとなっては、お尻に火がついた状態での対応を余儀なくされます。

確かに、世の中にはあなたの会社に意地悪をしようという人もいないとは限りません。

しかし、他人とバッティングする場合というのは、必ずしもその人に悪意があるわけではなく、単に自分のビジネスを守りたいがために、商標権者として権利侵害をしないでくれと要求してくるに過ぎないという場合の方が多いといえます。

正当な権利行使をされてしまえば、応じざるを得ないのが法であり制度ですから、そうならないよう、自己防衛のための対応はすべきです。

とはいえ、創業したばかりでは商標に投下できる資金が少ないという場合もあるのが実情だと思います。

しかしこの場合でも、最低限押さえるところについては是が非でも取っておかないと、後で涙を飲むことになります。

創業段階の資金調達に商標権の取得費用も織り込んでおくのが望ましいと言えます。

成長段階では競合他社の参入を防ぐべき


創業期を乗り越え、これからは成長路線だという場合、事業の地域的拡大・量的拡大はもちろんですが、周辺分野や異業種への進出ということもありうるところです。

いよいよこれから!とプレスリリースをしたところ、他社から内容証明郵便を頂いたなんていう話はありがちな話です。

創業期に商標権を取得したのになぜ?と首を傾げる方もいらっしゃるかと思いますが、商標権には権利範囲がありますので、この範囲外では、他人の商標権が存在していることがあります。

自分の権利範囲を超えたところで商標を使っていれば、他人の商標権を侵害したとしても何も不思議ではありません。

創業期に商標権を取得するときに、将来まで見越して広めに権利化ができていれば、こうしたリスクは低くできると言えます。

しかし、創業期の権利化を最低限の範囲にしてしまったという場合、成長期に入る頃までには権利範囲の拡大を図っておく必要があります。

こうすることで、自らが安心して事業を行うことができる範囲を広げておきつつ、他社が紛らわしい商標を用いて周辺事業を行うことを防ぐことができるようになります。

また、この他に注意しなければならないのは、創業期に登録をした商標と、その後使用している商標が一致していないという場合です。

登録商標と使用商標が一致していない場合、登録商標が適正に使われていないということで、商標登録を取り消されてしまうリスクもあります。

創業期を乗り越えたら、自社の商標権が適正な状態にあるかを見直すようにしましょう。

上場を考えた時には網羅的に権利化をすべき


成長期を経て、いよいよ上場・IPOを考え始めた場合、他社から隙を突かれぬよう、徹底的な防衛を図る必要があります。

改めて自社ブランドの棚卸しを行い、商標権の有効性を確認しつつ、その取得している商標や設定している権利範囲が適正かをチェックします。

もしそこに抜け漏れがあれば、直ちに商標登録の取得に動く必要があります。

不運にも他人の商標権があるというような理由により、ある分野で商標権の取得ができないという場合、それがどのように事業内容に影響を与えるかを検討し、商標権侵害とならないように最新の注意を図るべきです。

以前の記事では、上場を目指すスタートアップは創業期に商標権を取得すべきと書きましたが、ブランドの保護は、ここまでお伝えのように創業期に商標権を取得しただけでおしまいというものではありません。

企業の成長と共に着眼点やかけるべき費用というものも変わってくると言えます。

商標権を保有している企業であっても、改めて他の専門家の目でチェックをしてみると、何か発見があるかもしれません。

当事務所では、保有されている商標登録の有効性・適正性の分析・検討を行っていますので、お気軽にお問合せください。


<<お問い合わせはこちらから>>

この記事の内容について詳しくお知りになりたい方は、
以下のボタンからお気軽に当事務所までご連絡ください。


にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村 ランキング参加中です!

PAGE TOP