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021:【事業者向け】米国商標の「登録後の監査プログラム(Post Registration Audit Program)」について

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「米国商標の「登録後の監査プログラム(Post Registration Audit Program)」について」です。

ちょっとマニアックな話になりますが、大事なことの割にはあまり解説記事が見当たらないので、解説します。

目次


  • 登録後の監査プログラムって何?
  • 監査プログラムに該当したらどうなるのか
  • 応答した後はどうなるか

登録後の監査プログラムって何?


米国は、商標権の発生が商標の使用という事実に基づくものとされます。

商標登録は、その商標権の効力を補完する役割を果たしていますので、実際に使用されている商品・サービスについてしか商標登録を維持し続けることができません。

このため米国では、その登録内容の見直しの機会として、定期的に使用宣誓を行うことが求められています。

しかし、実際には、現実には使用されていない商品・サービスについても使用宣誓がされていて、適正な登録内容になっていないという問題点が指摘されていました。

そこで米国特許商標庁(USPTO)は、商標登録の適正化を図るため、2017年3月21日付の商標規則改正により、この監査プログラムを導入しました。

この監査プログラムは、2017年11月から開始され、商標登録の維持に当たって提出された使用宣誓が適切であるかをUSPTOがランダムに抽出して監査を行うものとされています。

監査対象に該当すると、追加の使用証拠の提出が必要となります。

対象となる要件は以下の通りで、商標登録がされてから5〜6年の時点での使用宣誓と、商標登録の更新の時点での使用宣誓のどちらも対象になります。

(a) 4つ以上の商品またはサービスを含む区分が1つ以上ある商標登録。
例えば、第18類で「巾着袋;札入れ;バックパック;ラゲージタグ;スーツケース」を指定している場合。

または

(b) 2つ以上の商品またはサービスを含む区分が少なくとも2つ以上ある商標登録。
例えば、第18類で「財布;スーツケース」を指定しつつ、第25類で「被服すなわちシャツ・ショーツ・パンツ・コート・帽子」、第35類で「被服の小売店」を指定している場合。

監査プログラムに該当したらどうなるのか


使用宣誓手続きを行うと、USPTOで、その内容が適切であるかどうかの審査がされます。何事もなければ許可通知が発せられます。

しかし、この監査プログラムに該当することになると、USPTOから応答指令が届きます。

その指令には、具体的に「●●についての使用証拠を提出せよ」と指定がされますので、期限までにその証拠を提出することになります。

もともと、使用していることを宣誓しているのだから、使用証拠を出せるだろうというのが建前です。

しかし前述の通り、この監査プログラムは、いい加減な使用宣誓によって本来は消滅しているべきである商標登録が残ってしまっているという状況に対処するために開始されたものです、このため、実際には使用証拠を出せない場合もあるようです。

もし使用証拠を出せない場合にはどうなるのでしょうか。

この場合、いきなり商標登録が全部抹消されるということはありませんが、再度指定している商品・サービスの内容を精査して、本当に使用しているものに限定を行う必要があります。

ただし、限定を行う際には追加費用を納付することが求められます。

また、監査対象の商品・サービスについて使用証拠を提出できない場合は、監査対象として選択されたものだけでなく、使用証拠を提出できないすべての商品・サービスを削除する必要がありますので、注意が必要です。

さらに、この監査プログラムで指定された期間内に応答をしない場合には、商標登録全体が抹消されますので、この点も注意が必要です。

もっとも、応答期限は以下の通り、少なくとも6ヶ月は与えられることになっていますので、時間は十分にあると言えるでしょう。

・通知の発行日から6ヶ月後の日

または

・法定の使用宣誓期間の終了日(猶予期間を除く)

応答した後はどうなるか

応答により、無事に使用宣誓が認められますと、許可通知が発せれらますので、こうなればひとまず安心です。

継続して、適正な商標登録の維持に努めるようにしましょう。

しかし、残念ながらもし再度の応答指令がかかってしまうこともありますが、その際は、指令内容を確認の上、対応を進めることになります。

当初の使用宣誓(できれば出願)の時点から、実際に使用しているものにしっかりと限定をしておくことが大切と言えます。

詳細は、以下のリンクに記載がありますので、ご興味のある方はご覧ください。

Post Registration Audit Program|米国特許商標庁


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