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065:【商標権の保有者向け】不使用取消審判をかけられたらどうするか?商標登録を守るには社内の管理体制の構築が鍵

前回まで、現実に使われていない商標についての登録を取り消すための制度である不使用取消審判について解説してきました。

過去記事はこちらからどうぞ
063:【事業者向け】使われていない他人の登録商標が自社ブランドを商標登録するときの障害になる場合の対応①|不使用取消審判の活用方法
064:【事業者向け】使われていない他人の登録商標が自社ブランドを商標登録するときの障害になる場合の対応②|不使用取消審判の準備と流れ

既にお伝えのように、不使用取消審判などの取消審判は、近年では、取り消しとなっている率が70%を超えています。このため、これから商標権を取得しようと考えている方にとってはとても有用な制度で、今後、一層の活用が予想されます。

一方、商標権を持っている側の立場からすれば、そう易々と商標登録を取り消されてしまっては困ります。

もちろん、商標権を取ったものの、現在では全く使っていないという場合、心中穏やかではないかもしれませんが、実害はないともいえます。問題は、実際に使っているのに不使用取消審判をかけられたという場合です。

目次


  • 応答期間は40日!応答しないと商標登録が取り消しになる
  • 商品写真だけではない!証拠として認められる資料は色々ある
  • 社内の体制づくりが重要!日頃の収集・保管が万が一の時に活きてくる
  • 不使用取消審判をかけられてから焦って使い始めても認められない
  • 登録商標と実際に使っている商標が一致しているかが重要

応答期間は40日!応答しないと商標登録が取り消しになる


過去記事にも書きましたが、不使用取消審判は誰でも請求することができます。外国人でも請求できます。

このため、日本であなたの商標と似たような商標と使いたいと考える人が、世界のどこかに現れたら、不使用取消審判をかけてくる可能性があるといえます。

では、そんな不使用取消審判ですが、自社ブランドに対して提起されたらどうなるのでしょうか。

審判請求があると、直ちに商標権者に通知が入るわけではありません。特許庁で方式的な審査がされたり、審判官が誰になるかが決まったりしますので、実際に商標権者の元に審判請求があったことの通知(答弁指令)が行くのは、審判請求があってから1〜2ヶ月後となります。

答弁指令が届きますと、ボールが商標権者(商標登録の名義人)に来たことになります。その答弁指令には、答弁があれば副本発送の日から40日以内に提出せよと書かれてきます。

答弁があれば・・・提出せよということですから、期限を過ぎてしまうと、答弁がないのだと判断されてしまいます。

答弁がないということは、商標登録が取り消されても構わないというものとして取り扱われます。

こうなりますと、請求された範囲で商標登録が取り消されることになってしまいます。

商品写真だけではない!証拠として認められる資料は色々ある


不使用取消審判に対して反論を行う場合、特許庁に対して「答弁書」という書類を提出します。

答弁書には、ただ使っていますと書くだけでは足りず、実際の使用を示す証拠を添付する必要があります。この証拠のことを、「使用証拠」と言います。

使用証拠は、登録商標が表示されていることがわかるものであることが大前提です。

具体的には、商品の写真のほか、商品のパンフレット・販売しているウェブサイトの写しといったものも認められます。お店であれば店舗外観の写真も有効です。取引で用いられた請求書や納品書の写しも、登録商標が表示されているものは直接の使用証拠として使うことができます。

ただし、その証拠が、審判請求がされたことが特許庁に登録された日(予告登録の日)の前3年以内のものである必要があるので注意が必要です。

社内の体制づくりが重要!日頃の収集・保管が万が一の時に活きてくる


このように、いざ不使用取消審判をかけられると、過去の資料を集めてくることになります。

過去のものなど取っていないとか、捨ててしまったということもあるかもしれませんが、それでは自社のブランドを守ることはできません。

社内でこうした事態に備えるための対策を予め構築していたかが明暗を分けることも少なくないと言えます。

リスクに備えることは、何も事業運営そのものばかりではありません。事業運営の基礎となる商標登録を、万が一他人から攻撃を受けても守れるような体制づくりが求められています。

不使用取消審判をかけられてから焦って使い始めても認められない


ちなみに、不使用取消審判をかけられたことを知った後に焦って使い始めても、登録の取り消しを免れることはできません。

というのも、こうした使用はいわゆる「駆け込み使用」と呼ばれ、登録商標が使用されていたとは認めてもらえないためです。

3 第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であつて、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする

商標法第50条第3項本文

日頃から登録商標を使い続け、それをこまめに収集・整理をしておくことが大切です。

登録商標と実際に使っている商標が一致しているかが重要


以上見てきましたように、不使用取消審判をかけられると、商標権者から積極的に対応をしないと(しかも40日以内に!)、重要な財産である商標権の元となる商標登録が取り消されてしまいます。

このため、望ましくは登録された商標と使用している商標が一致していることが望ましいと言えます。

しかし実際には、商標登録を受けようとして特許庁に出願をした時点と、使い始めてしばらく経った時点とでは、登録商標と実際の使用商標が違っている場合も少なくありません。

会社の状況やビジネスの方向性が変わっていたりすることもあるでしょうから、変更があるということは、致し方ないところかとは思います。

しかし、こうした環境の変化があったから登録商標とは違う商標を使っていたのだと説明をしても、特許庁は納得しません。商標が変わったのであれば、ちゃんと改めて権利化し直すということが大切です。

もちろん、ちょっとしたフォントの違いなど、些細な変更すら認めてもらえないというほどに厳格なものではありません。

しかし、そこには「社会通念上同一」と言えるかという法的な判断が伴います。

登録証に表示された商標(登録商標)と、実際にお使いになっている商標を見比べたときに、ちょっとでも違いがあれば、要チェックです。使っている商品にズレが生じた時も同様です。

チェックの結果、社会通念上同一と言えない場合、自社ブランドを守り抜くためには、改めて出願し直すことが重要になってきます。

弊所では、こうした変更使用が問題ないかの診断も行っていますので、お気軽にご相談ください。


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