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059:【模倣被害者向け】ニセモノが流通した時にどのように知財で立ち向かうか|事前検討編(商標法・意匠法・著作権法・不正競争防止法)

ある商品がヒットして人気を博することになると、どうしても、その商品に寄せたものがどこかからか出てきます。文化の発展にしろ、産業の発達にしろ、過去の蓄積の上に成り立っているものですので、マネすることが全て悪いこととまではいえません。

しかし、ヒット商品をそっくりそのままマネしたり、人気ブランドにタダ乗りするような、いわゆるコピー商品までが許されるかというと、そうではないでしょう。道義的にも許せませんね。

では、そうしたコピー商品を、どうやって法的に追求したら良いのでしょうか。まずは事前のチェック項目から解説していきたいと思います。

目次


  • 権利は持っているか|商標権や意匠権は登録を受けないと権利が発生しない
  • 商標権も意匠権も持っていない場合|焦って権利を取りに行けるのか
  • 権利がなかったら何もいえないか|不正競争防止法という法律があるが
  • 著作権ではどうか|登録なしでも発生するもののアイデアには権利は及ばない

権利は持っているか|商標権や意匠権は登録を受けないと権利が発生しない


まず、権利行使の前提として、権利を持っている必要があります。

ブランドをマネされているのであれば、商標権が必要です。商標権を持っていると、その権利を使って無断使用をやめさせることができます。根拠は次の通りです。

第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。

商標法第25条本文

第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

商標法第36条第1項

もっとも、商標登録されているだけではなく、マネされている商品が、商標登録で指定している商品・サービスと同一・類似である必要があります。

デザインをマネされているのであれば、意匠権が必要です。意匠権を持っていると、その権利を使って無断実施をやめさせることができます。根拠は次の通りです。

第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。

意匠法第23条本文

第三十七条 意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

意匠法第37条第1項

こちらも商標法と似たように、意匠登録されているだけではなく、マネされている商品が、登録されている意匠にかかる物品と同一・類似である必要があります。

反対に、もし商標も意匠も登録していないという場合、商標権や意匠権で権利行使をすることはできません。

商標権も意匠権も持っていない場合|焦って権利を取りに行けるのか


商標権は、他に同一・類似のものが出願・登録されていなければ、出願をして登録を受けることで商標権を確保することができます。もし商標権を持っていない場合、早急に専門家に依頼をして商標登録が可能であるかの検討をして、直ちに商標登録出願を行うべきといえます。偽物が流通しているというのは、緊急性があるものですので、早期審査の活用も考えられます。

もし他人が既に出願をしていたり登録を受けていたりする場合には、状況に応じて、情報提供をしたり、異議申立てや無効審判などの対策を練ることになります。

一方の意匠権は、新規性がなくなってしまうと登録を受けることができませんので、自社商品を対外的に公開してしまうと、意匠登録を受けることはできなくなります(新規性喪失の例外の適用を受けられる場合は意匠登録を受けられる可能性があります)。

権利がなかったら何もいえないか|不正競争防止法という法律があるが


以上検討してきたものの、商標権も意匠権も論拠として使えないという場合、他にどのような手段があるのでしょうか。

商標法とも意匠法とも異なる法律で、不正競争防止法というものがあります。

マネされた商品が、日本国内で有名なものであれば、商標登録を受けていなくても、不正競争防止法で、差止請求を行うことができる余地があります。また、商品の外観をそっくりそのままマネされたという場合も、不正競争防止法に基づく差止請求が考えられます。

ご参考まで、条文を挙げておきます。

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

不正競争防止法第2条第1項第1号〜第3号

ただし、前者(1号・2号)の場合には、有名であるということは証拠を集めて裁判所を納得させないといけませんし、後者(3号)の場合、日本国内における最初の販売から3年以内という期間制限がありますので、いずれにしても、権利行使が本当にできるかということは、十分に検討する必要があるといえます。

著作権ではどうか|登録なしでも発生するもののアイデアには権利は及ばない


このほか、考えられる手段としては、著作権法が挙げられます。このほか、考えられる手段としては、著作権法が挙げられます。例えば、マネされているのが、商品パッケージという場合、そこに用いられている写真やイラストが、著作物という場合もあり得ます。キャラクター商品の場合、ぬいぐるみ自体が著作物の複製あるいは変形という場合もあるでしょう。このような場合、著作権法に基づいて、差止請求を行うことができます。

著作権は、創作した段階で、行政庁への登録手続きを経ずとも発生するものです。しかも、商標権や意匠権のように、商品・サービスや物品というものを考える必要がありませんので、ある面では幅広い権利とも言えるでしょう。

ただし、著作権は、登録なしに発生する権利という特性上、著作権が発生するほどの表現か(著作物と言えるのか)という点が訴訟では問題になります。また、権利行使をしている人が著作権を本当に有しているのかという点も争点になることがあります。

もしその著作権が、誰かから譲り受けたものである場合には、「著作権登録」を受けておくことで、訴訟上有利に働くこともありますので、積極的に著作権登録を受けておくことが賢明と言えるでしょう。

なお、著作権法は、思想または感情の創作的な表現を保護するものですので、コンセプトやアイデアが似ているという程度である場合、著作権を行使することはできません。

よって、やはり著作権法に基づく権利行使の場合でも、専門家に見解を求めることが必要と言えます。

次回は実際の権利行使について検討をしていきます。


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