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097:【個人・事業者向け】防衛的観点から行う商標登録出願とは

商標権は、商標登録を受けることで発生します(商標法18条1項)。商標登録を受けるためには、商標を特定するとともに、使用する商品やサービスを指定します。

しかし、ご自身が現に使用しているものだけを指定するピンポイントな出願では、得てして権利範囲が不十分になりがちです。

一方。ご自身のビジネスで使用する予定がない商標や商品・サービスを指定することは、必要ないものに無駄なコストを投じることになってしまいかねません。

今日は、「防衛的な商標登録」をテーマに、どのように出願を行っていくべきかを考えていきたいと思います。

目次


  • 権利の最大範囲は出願時に決まる
  • 関連商品・関連サービスまでまとめた権利化が望ましい理由
  • 商標はバリエーションで押さえる
  • まとめ

権利の最大範囲は出願時に決まる


商標登録を受けるためには、特許庁に、登録を受けたい商標と使用する商品やサービスを記載した願書を提出することから始めます。

提出した願書について、出願後、審査等に係属している間であれば、内容を補正することも可能ですが(同68条の40)、商標の審査が出願がされた日付を基準になされることから導かれる注意点があります。

すなわち、指定する商品やサービスを細分化したり範囲を狭めることは認められますが、範囲を拡大したり追加したりすることは認められていないというものです。

範囲を拡大したり追加するような補正を行うと、その補正は要旨を変更するものとして補正却下になってしまいます(同16条の2)。

そのようなことにならないよう、出願の段階で登録を希望する最大範囲を指定する必要があるということを覚えておいて頂けたらと思います。

関連商品・関連サービスまでまとめた権利化が望ましい理由


では、出願をした後になって、範囲を追加したくなった場合にはどうしたら良いのでしょうか。

前述の通り権利範囲を拡大する補正は認められていませんので、残念ながら新たに出願を行う必要があります。

しかし、新たに出願をし直すとなると、追加した出願の日付が後ろ倒しになります。

出願日が後ろ倒しになるということは、他人の出願が間に入り込んでいるリスクがありますので、最終的に権利化できないという恐れも出てきます。

さらに、新たな出願を行うことになりますと、追加でコストが発生することになりますし、最終的に登録になったとしても、1つの商標なのに2つ以上の登録に分かれてしまうことになり、管理コストも上がってしまうことでしょう。

このように、権利範囲を後から追加しようとすると、リスクもコストも発生してきますので、当初の出願段階で、関連するであろう商品やサービスをまとめて指定して、できるだけ広い範囲で出願をしておくことが望ましいと言えます。

不要なところまで広げる必要はありませんが、できるだけ広い範囲で出願をすることで、前述のようなリスクとコストを下げつつも、第三者による出願を効果的に排除して、広い範囲で独占状態を作り上げることが可能になります。

商標はバリエーションで押さえる


以上、指定する商品・サービスの問題をお伝え致しましたが、実は、「商標」についても広く権利化をしておくことを検討しておくとより良いと言えます。

これは、事業の進捗に応じて対応を考えるべきですが、一般論として、事業を始める段階であってまだロゴができていないときは、書体を特定しない態様(標準文字)で出願をして、最先の出願日を確保することが非常に大切です。

ロゴができるのを待っているうちに他人が出願してしまっては元も子もないからです。

その後、ロゴができたらロゴで権利化をすることも検討すると良いでしょう。

出来上がったロゴが、書体の変更程度のものであれば、改めてロゴで権利化する必要性は高くないかもしれませんので、出願の要否は、商標専門の弁理士に相談することが良いと言えます。

もしロゴ化の程度が高いと考えられる場合には、重要な商標であればこそ、併せて権利化しておくことが大切になります。

さらに、異なる字体でも権利化することも考えましょう。ここにいう「字体」というのは、書体のことではなく、漢字・平仮名・片仮名・アルファベット文字といった文字種のことを指しています。

仮に、漢字で書かれた商標がメインで使うものであれば、まず漢字商標を権利化することは必須となります。

しかし、確実に他人の商標登録を排除しておくためには、その読みを平仮名、片仮名あるいはアルファベットで記載した商標の登録を取得することも有効である場合があります。

仮名表示の商標は、同音異字で書かれた他人の商標を効果的に排除することに役立つことになるでしょうし、アルファベット表示の商標は、漢字が通用しない国に進出する際などにも有用であるためです。

まとめ


以上、他人の商標から効果的にご自身のブランドを防衛するという観点で、商標登録出願を行う際の注意点をお伝えしてまいりました。

商標は、単に出願をして登録を受ければ良いというものではなく、他人の使用や登録を排除していくことを通じて、ブランドの独占性を維持していく必要があります。

前述の方策は、具体的事情に応じてアジャストしていく必要がありますので、どのようにすれば費用対効果が高く運用できるかは個別に検討が必要なものとなります。

ご自身のブランドをどのように守っていくのかについて、ご興味・お悩みがありましたら、お気軽に当事務所までご連絡をいただければと思います。


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