わかって納得の知財ブログ

045:【事業者向け】企業のマスコットキャラクターを安心して使い続けるには(キャラクターの名前について)

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「企業のマスコットキャラクターを安心して使い続けるには(キャラクターの名前についてャラクター名について)」です。

前回まで、マスコットキャラクターのイラストについて、著作権法と商標法の観点からお話をしてまいりました。

今回は、このシリーズとしての最終回として、マスコットキャラクターの名前についての注意点をお伝えしたいと思います。

目次


  • キャラクター名を著作権法で保護することは難しい
  • キャラクター名は商標法で保護しよう
  • 他人の登録商標と同一・類似の場合には商標権侵害になることも
  • トラブルを予防するためには早期に商標登録を受けておくべき

キャラクター名を著作権法で保護することは難しい


キャラクターを作ったら、そのキャラクターの名前を付けることがほとんどだと思います。キャラクターのイラストは、著作物として保護されるとお伝えしてきましたが、その名前はどうでしょうか。

結論からお伝えすると、キャラクターの名前というのは、通常、著作物となるものではありません。

著作物というのは、著作権法に定義が設けられていて、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要です。なるほど、キャラクターを名付けるにあたっては、何らかの思想や感情を表しているという場合もないとは言えません。

しかし、とかくキャラクター名となると、限られた文字数で名付けることとなりますので、工夫をするにしても限られており、そのネーミングに創作性があるのかという点が問題になります。

そのネーミングが冗長なものであれば、著作権法による保護も考えられなくもありませんが、ほとんどの場合、著作物ではないという結論に至ることが多いと言えるでしょう。

この点について参考になるのが、ポパイ・マフラー事件です。判決文の一部を引用してみたいと思います。この事件では、

乙標章は、『POPEYE』の文字のみからなるものであり、かかる著作物の題名や登場人物の名前は著作物から独立した著作物性を持ち得ないのであるから(以下略)

大阪地判昭和59年2月28日判タ536号418頁

と判断され、結局、「POPEYE」というキャラクター名は著作物ではないという結論となりました。

このように、キャラクターの名前を著作権法で保護してもらうというのは、なかなか難しいというのが実情となります。

キャラクター名は商標法で保護しよう


では、他人が全然違うキャラクターに同じ名前をつけたというとき、何も言うことはできないのでしょうか。キャラクター名が著作物ではない以上、名付けそのものについて、何か法的に文句をつけるというのは、基本的には難しいと言えます。

しかし、それが何らかの商品やサービスとの関係で使われる場合は、話が変わってきます。

キャラクターそのものを商品とする場合はもちろん、商品やサービスとの関係でキャラクター名を表示するような場合、それは、キャラクター名も商標として使っていることになります。

商品名やサービス名も商標ですから、①商品名・②キャラクターのイラスト・③キャラクター名が表示されている商品であれば、3つのブランドが付されているという理解になります。

キャラクターの名前なんて登録されているの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますので、いくつか見てみましょう。

例えば、有名どころの例を挙げますと、以下のようなものが〔文字商標〕として商標登録されています。

・「PEPSIMAN」(登録第4216819号商標ほか)
・「ぴちょんくん」(登録第4527194号商標)
・「ズーミン」(登録第4875635号商標)
・「ドンペン」(登録第5125616号商標)
・「エネゴリくん」(登録第5192592号商標)
・「パルコアラ」(登録第5721426号商標)
・「炭治郎」(登録第6397480号商標)

人気が出てきたら登録しようなどとしていると、悪意を持った他人が勝手に出願してしまうこともありますし、悪意なく似たような商標が出願されてしまうこともあり得ますので、早めの出願が望ましいと言えます。

他人の登録商標と同一・類似の場合には商標権侵害になることも


もし、キャラクター名と同じまたは似た商標が既に登録されている場合、どのように考えたら良いのでしょうか。

まず、商標権の効力は、同一のみならず、類似の範囲まで及びます。そして、その類似というのは、商標が類似するかどうかという観点と、商品・サービスが類似するかどうかという観点から考えることになります。

このため、もし登録されている他人の商標が、全然関係ない非類似の商品やサービスについての登録であれば、よほど有名なものでない限り、気にする必要はありません。

しかし、自社の商品やサービスと同じか似ている範囲について登録されている場合、無視することはできません。

そのままそのキャラクター名を商品・サービスについて使ってしまうと、商標権を侵害するものとして、責任追及を受ける可能性がありますので、本当に商標権を侵害している状態であるのかについて、直ちに調査・分析が必要になります。

また、自社の商品やサービスとは異なるものの、例えば洋服類やスマホグッズ、アクセサリー類、文房具類、飲食料品など、キャラクターグッズとして展開がありそうな分野での登録である場合には、注意が必要と言えます。

トラブルを予防するためには早期に商標登録を受けておくべき


マスコットキャラクターは、初めこそ自社の商品やサービスのPRのためのキャラクターとして生み出されるものですが、現代では、何かの拍子に人気に火がついて、キャラクタービジネスに展開することも珍しくありません。

もちろん、だからと言って最初から不必要な範囲でまで権利化をすることまでは必要ありません。

しかし、将来的に展開が予想されるところまでは、あらかじめ商標登録をしておくというのが懸命だという場合もあります(ケースバイケースですが)。

基本的には、マスコットキャラクターの名前の案が決まった段階で、商標登録に向けて準備を進めるべきと言えるでしょう。


<<お問い合わせはこちらから>>

この記事の内容について詳しくお知りになりたい方は、
以下のボタンからお気軽に当事務所までご連絡ください。


にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村 ランキング参加中です!

PAGE TOP